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// Challenge INDEX / 大峯奥駈修行 2006 自分の原点を求めて・・・。


大峯奥駈修行 2006
   自分の原点を求めて・・・。

ご縁
 昨夏、この大峯奥駈を修行されたクライアントと、その一隊の大先達とのお二人からご縁を戴き、昨年の秋頃からこの計画は始まりました。

勉強
修行に行くと決めたからには、まずは勉強から。色々と本を買い、大峯奥駈修行のルーツやその背景、役行者の業績などなど・・・もう気持ちは、にわか行者です。

役行者
大峯奥駈修験道の開祖として超人的な説話を残し実在した人物とされているのが役行者です。1300年前、彼によって開かれた山岳宗教は途絶える事無く、今も脈々と私達の心の中に伝わっています。

世界遺産
大峯奥駈道は平成16年夏、奈良・和歌山・三重の3県にまたがる「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産に登録されました。役行者が残した行者道が「人類の所産である文化とその母体である自然の両者を全人類で力を合わせて保護しよう」という世界遺産条約の基本理念に限りなく近いという証なのです。

逆峰修行
修験道の伝承によれば、役行者はまず最初に熊野から吉野に至ったということです。その為、熊野から吉野に向かって歩くコースを「順峰」といい、その逆で吉野から熊野に向かうコースを「逆峰」といいます。つまり・・・今回の修験道は逆峰修行という事になります。

女房の理解
数年前にNHKスペシャルに大峯奥駈が取り上げられた事がありました。その当時のビデオを女房と見ながら・・・「まさかパパこれに行こうと思ってんの・・・」

法衣・法具
まずは・・・準備からという事で、女房と一緒に吉野山へ。大先達も同行戴き、法衣と法具の調達から・・・。どれもこれも見慣れない、聞き慣れないものばかりです。しかし後でその云われを聞くとなるほど・・・と言うものばかり。先人の知恵です。

地下足袋
道具を揃えてから、一番気になっていたのが地下足袋。足裏のまめは覚悟をしていましたが、出来るよりは、出来ない方が勿論良いに決まっている。そこで、毎夜体力づくりを兼ねて1時間あまりのウオーキング。しかし、白い地下足袋姿なので、明るい所を避けてのウオーキングとなりました。

77000円
今回の大峯奥駈修行全工程の参加費用です。この金額は我々を道中お世話戴く奉行の皆さんも全て平等な金額らしい。全員同じスタンスで修行をさせていただくという事に感謝、感謝。

入行許可書
5月28日入行許可書が届いた。ああ・・・これで正式に申し込みOKだ。自然と背筋が伸びる。

出張
2週間ほど前から仕事関係の方々に、お知らせをしました。ただし・・・長期出張で・・・と。正直にお伝えをしてもなかなか理解して頂けないので・・・。皆さんから、ヨーロッパですか?アメリカですか・・・・?

7月15日
ようやく・・・この日がやって来ました。家族や仕事の事も心配であるが、とにかく、これからの9日間を自分自身の為に100%使おうと心に決める。しかし楽しみと不安が混在した時間がしばらく続く。

東南院到着
午後2時過ぎに東南院に到着。受付を済まして、控室へ荷物を運び込むと既に数人の参加者が法衣に着替えをしている。奥駈の修行は明日からのはず・・・と思いきや・・・早速、安全祈願の準備らしい。

誓約書
「この奥駈修行は、個人の意志と自己責任で参加し修行させて頂きます」この誓約書に押印し提出。

新客
なかなか聞きなれない言葉だが、この奥駈に初めて参加する修行参加者の事をいう。もちろん私も新客。今年は約60名のうち約20名が新客という事らしいが今のところ・・・誰が新客やら奉行やら全くわからない。

停電
到着早々の安全祈願も無事終わり、夕食までの間、少しごろ寝をしていると急に停電。吉野山全体が停電と聞き再度びっくり。約2時間あまり続いただろうか、食事もろうそくの灯りで済ます事となった。

食事
修行中の食事について少々。朝、夜は宿坊で戴きます。ただし、準備は新客。全員で般若心経を唱えた後、いっせいに無言のまま食事を戴きます。5分後いっせいに「ご馳走様」。あっという間です。もちろん精進料理なのですが、ボリューム満点。こうや豆腐をたらふく戴きました。お昼は宿坊で作っていただくお弁当です。

ヒデ
修行の道中、神社や石仏、神木など山中におられる神仏に勤行を捧げながら黙々と歩き続けていきます。その勤行毎に、桧板のおふだ(ヒデ)を納めていくのです。縁あってそのヒデを数枚持たせて頂く事になりました。

7月16日
あ〜眠い。3時起床、4時出発。この行程がこれから1週間続く。この1時間の間に、起床・布団整理・食事用意・食事・後片付け・着慣れない法衣、法具の準備・5分前集合・出発・・・出発前から、ふらふら・・・今日は24キロの行程です。

新客修行
4時に出発し、黙々と歩き続ける途中に「新客修行」というのがあります。新客だけの修行なのだが、神仏の歴史や奥駈の歴史など・・・たくさんの勉強をする事が出来た。

表行場
早朝4時から歩き始めて11時間、24キロ時点、ようやく、今日の目標である山上ヶ岳に入ると、まずは・・・表行場。その代表は「西の覗き」である。奉行の指示のまま断崖絶壁の岩場からロープで吊るされる捨身の修行。「親孝行するか」の一喝に、即座に「は、はい」

裏行場
表行場の断崖絶壁から一旦、自分は死んだものと考え、この裏行場の胎内潜りなどで、生き返るとされる裏行場。数々の岩場が続き最後に命を落しかねない平等岩を巡って一日の修行を終える。もう足が棒のようです。

桶2杯
どこの山へ行っても、水は大変貴重な資源である。山上の宿坊に到着するとすぐに「新客から風呂」という指示が出る。しかし、風呂場に行くと風呂奉行がおられ・・・桶2杯のお湯があるだけなのだ。何もかも・・・修行、修行。

テーピング
夜のミーティング後、奉行の方に足のテーピングをしていただいた。両足の太もも・ふくらはぎ・・・剥がす時に痛いだろうな・・・と思いつつ、これからの工程を考えると我慢我慢。

7月17日
昨日のテーピングのおかげで、足が少し楽になった。いや、慣れてきたのかもしれない。とにかく今日は、弥山まで頑張ろうと心に決める。天気も昨日と同様に曇り空に風があり、快適な天気だ。あとは体力勝負。

掛け念仏
急な登り道にかかると、必ず奉行さんから掛け念仏の大合唱が始まる。これでもかこれでもかと続く山坂道。一心不乱に声を出して、足を進めると不思議と体が前に動くのだ。「懺悔懺悔 六根清浄」

懺悔懺悔 六根清浄
「さんげ さんげ ろっこんしょうじょう」と読む。人間は、眼・耳・鼻・舌・身・意の六根でもって行為をつくり、罪をつくっている。その罪汚れを懺悔し六根を清浄すると言うのが、掛け念仏「懺悔懺悔 六根清浄」なのだ。

トリカブト
昔、「トリカブト事件」という事件があった。トリカブトの根に含まれる毒性を利用した殺人事件だったと記憶する。しかし行中、あちこちに咲くトリカブトは、毒性などとは微塵も感じない程、可憐な白い花を見せてくれた。

弥山到着
弥山の宿坊へ到着する直前、約1時間、ずーっと登りが続きます。いくら登ってもまだまだ先が見えず、胸突き八丁と呼ぶそうです。しかしここも・・・掛け念仏「懺悔懺悔 六根清浄」によって助けられました。弥山の宿坊に到着するやいなや・・・どしゃ降りの雨。合掌。

7月18日
夜中、屋根を叩く豪雨の音で眼が覚めた。ところが4時出発時には雨もすっかり上がり、気分爽快。そろそろ足も慣れてきたのか、痛みも無くなってきた。

オオヤマレンゲ
弥山から八経ヶ岳に向かう途中、オオヤマレンゲの保護区がある。昔はこの辺り「大峯の天女花・オオヤマレンゲ」の群生地であったのだが酸性雨災害・自然生態系の激変による自然環境の変化によって鹿被害から守る措置らしい。

絶景・・・
八経ヶ岳を越え、絶景であろう尾根道を延々と歩く。昼過ぎ、釈迦岳に到着。ここで護摩勤行を行い神秘的な時間が流れる。晴れの日の絶景も良いだろうが、この霧に包まれた瞬間は印象的であった。

金剛杖
富士登山の時にも金剛杖を持って行ったが、実際は焼印用のお土産となってしまい、あまり効果を発揮してくれなかった。今回も・・・と思いながら、まさか伸縮自在の登山用ステッキではまずいと思い、金剛杖をもっていくことにする。しかし、前鬼山の下りは金剛杖無しには語れないほど厳しいものだった。

桶5杯
昨日の宿泊所「弥山」には風呂は無かったので今日の宿泊所「前鬼山」は楽しみにしていたが、ここも桶5杯。やはり、水は貴重なのだ。

7月19日
4時起床。外を見ると雨・雨・雨。予定されていた裏行場は、道中危険な岩場が多数ある為中止となった。今日は前半工程の方と後半工程の方との交代日なので少し、気分的にもリラックス。

止観行
裏行場の代わりに行なわれたのが「止観行」。約1時間、眼で見る事も、心で見る事も、考える事も全て止める行なのだ。しかし、なにやら常に考えていたように思う。まだまだ修行が足りないのか。

お別れ
宿坊から30分あまりでバス停に到着。ここで前半工程の方とお別れだ。前半の満行おめでとうございます。後半も頑張ってきます。

バス
ここからバス移動となる。約1時間の移動だが、ここは何度か車で走った事がある場所。家からこんなに近い場所なのに、こんなに遠い1週間。なんとも微妙な感覚だ。

合流
午後4時頃、浦向の民宿で後半工程の方と合流する。何か不安げな方々に比べ、我々は「もうここまで来たんだから」みたいな余裕の気持ち。・・・だめだめ我を捨てよう。

恵まれた人
夜のミーティングの中で大先達から、こんなお話がありました。この暑い夏に、大金を払い、長期休暇を取り、しんどい、くさい、質素な食事、眠い、足が痛い、風呂が無い・・・等などの状況へ、皆さんは自ら志願してお越しになった。とんでもなく「恵まれた人」ばかりです・・・と。私も・・・そう思います。

7月20日
深夜から降り続いた雨が一向に上がらない。ポンチョと傘をかぶっての出発となった。この日は、上葛川の民宿に着くまで、終日・・・雨・雨・雨。

昼食
登りが厳しく、行者が大切な笠も捨てたと言われる笠捨山。その登り途中で昼食の時間となった。しかし、どしゃ降りの雨。山小屋の庇に少し体を寄せながら・・・こんな経験ありませんね。

アミノ酸
数年前の富士登山以来、山登りに欠かせないのがアミノ酸。体力的にバテバテ状態でも、このアミノ酸を体に入れると、びっくりする程見る見るうちに体力は回復し、元気になっていく。今年はタブレット状のものを持って行ったが、やはり今回も威力を発揮してくれた。

差し入れ
下着までずぶ濡れ状態で、上葛川の民宿に到着すると、大きなスイカが2つ。奉行さんからの差し入れらしい。めっちゃ甘くて美味しいスイカだった。

7月21日
またまた・・・雨・雨・雨。何やら、だんだん雨も嬉しく思えるようになってきた。この雨の中だからこそ、危険を伴い、轟々と流れる滝の横を歩き大自然を感じる事が出来る・・・そんな状況に感謝、感謝。

中敷
昨年、修行をされた方からのアドバイスで地下足袋用の中敷を教えてもらった。2600円の地下足袋に2000円の中敷・・・何かアンバランスな金額だが、効果は抜群。スポーツ選手用らしいが地下足袋とのマッチングはGOOD。お蔭さまで行中、足裏のまめは、全く出来なかった。

玉置神社
今日もまた、下着までずぶ濡れ状態で、玉置神社に到着。樹齢3000年という素晴らしい大杉の神木に向かって新客修行を行い、心身ともに清々しい気持ちになる。

足が・・・
ここまで数回あったのだが、夜寝ていると寝返りをうった拍子に、足がつるのです。アッ痛てて・・・そりゃ毎日20キロから25キロ山道を歩いてきたんだからあたり前ですね。

7月22日
この日も雨の為、早駈修行と言う山の中を駈け下りる修行は中止となった。あとは、折立という所まで歩き、バスによる移動。11時過ぎ、ようやく熊野本宮到着。

熊野本宮
整列し参道を堂々と行道。なんと清々しい気持ちなのか。法衣や地下足袋は汚れ、臭いもするが、何故か気持ちは気分爽快なのだ。1週間前吉野山を後にし、よくぞここまでこれたものだ。足の痛さも忘れ、最後の勤行となる。

スイカ
熊野本宮大社から神倉神社・速玉神社・那智大社・青岸渡寺・・・参拝する度に、周囲の方々からは合掌を受け、スイカや飲物の差し入れを戴いた。皆さんの有難さが身にしみて良くわかる。

禁酒
この奥駈修行中は、禁酒はもちろんの事、外部との連絡も一切出来ない。肌に刃物を当てる事も出来ないので、髭を剃れないのです。9日間のひげの状況は写真をどうぞ・・・。

たっぷり
無事、全ての行が終わり、勝浦温泉に到着。まずは、温泉である。ここでは「新客から・・・」という奉行の声も無く、ゆっくりと温泉につかる事が出来た。もちろんたっぷりの湯で・・・。

体重維持
道中、肉や魚や卵料理は無く、精進料理ばかりで、なおかつ運動消費も半端ではないはず・・・と思い体重計に載ってみると、行前の体重と同体重。やはりこの食事でも十分だと言う事なのか。人間の体はと言うのは丈夫に出来ているものだと改めて感心する。

満行式
精進揚げの宴を前に満行式が行なわれた。「大峯奥駈修行遂業せしことを証す」大先達から頂いた満行証書は重く心と体に届きました。

7月23日
朝から、吉野山へ帰るバスの中では缶ビールと缶チュウハイ・・・。昨日までの修行とはうって変わり観光バスでの旅行気分です。もちろん、気分爽快です。

蔵王大権現にご報告
少し、ほろ酔い気分で、蔵王堂へ無事満行のご報告勤行。その後、東南院へ戻り昼食を戴き、無事全ての行が終わり解散となりました。

最後に・・・
今、何か変わったかな・・・自分の原点は・・・と自問自答してみるが、まだ答えは見つかりません。ただ無事に満行出来た行動自体には満足感はあり、自信もあります。体力的、気力的、そして何よりも体調的に万全であった事が、満行に結び付いた様にも感じています。
大峯奥駈修行・・・自分とは懸け離れた世界の様に感じていた事が、意外にもそうではなかった事も、今回実感出来ました。
そして、行者が歩いてこそ・・・世界遺産/大峯奥駈道。今、役行者と共に、世界遺産への一役を担った気持ちで一杯です。合掌。


※ 大峯奥駈修行についてのHPをご紹介いたします。
  役行者ファン倶楽部  http://homepage3.nifty.com/enno-f/
  行者大集合      http://dr-gan.hp.infoseek.co.jp/


by yoshihisa ogawa





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